困ります、ファインマンさん

面白さ衰えず、どころじゃない。


ご冗談でしょう、ファインマンさんと同様、ユーモアに溢れたエピソード集。違うところはファインマンが大人になったこと。今までのは子供から大学院を過ぎた頃までのエピソードだったが、今度はもっと大人のファインマンマンハッタン計画で原爆を作って、広島と長崎に投下したあとのエピソード。


NASAチャレンジャー号爆発事故の原因を究明する委員会に任命されている話で大半が割かれていて、その話も十分に面白いのだが、その他も面白いところが満載すぎる。日本の話や妻の話や、外せないのが原爆の話。


ファインマンは原爆開発計画に加わることで科学は人を殺すことを知ってしまったわけだ。あれほど頭が良くかつ純粋に科学に打ち込んでいたファインマンは、科学は人を幸せにすると思っていたのだけどそれだけではないことを自分が証明してしまった。その落胆や、それでも科学にのめり込む理由やこの世の素晴らしさを書いた本書の最後の章「科学の価値」を読めたことはいつ以来なのか記憶に無いくらいの感銘を受けた。まだずっと余韻の中だ。この章はいくらなんでも美しすぎる。

ご冗談でしょう、ファインマンさんの下巻の最後の章「カーゴ・カルト・サイエンス」での疑似科学を糾弾し、科学を探求するものの心構えを説いた話も非常に素晴らしかったのは間違いないのだけど「科学の価値」を読んでからは改めて「カーゴ・カルト・サイエンス」を読みなおすとファインマンの若さを感じ取れる。科学は人を幸せにするって信じてやまないファインマンの純心がひしひしと伝わってくる。決してこの章の価値が落ちたという意味ではなくて、「カーゴ・カルト・サイエンス」でファインマンの純粋さを知ったあとに「科学の価値」を読むと深みが一層際立つ。

最近本読み虫になっているけど、ここ最近ではこの本、というよりこの章が最高に読めてよかったと思える文章だった。20Pにも満たないのにこんなに余韻に浸れるなんて。


「科学の価値」を読んで思った。もっと勉強すればよかったって。今までまともに勉強なんてしたことないものだから、この本でファインマンがどれだけ科学の美しさを唱えたってその美しさを理解出来ることに限界がある。物理学が理解できないという話ではなくてさ。考えてみれば物理学に比べたらプログラミングなんて始めから人が作ったものなんだから原理は簡単なはずなんだよね。プログラミングで表現するアルゴリズムなんかは難しいけど。今は難しいけどこの本読んで理解とはどういう事かってのが少しはわかってきたから今後は良い方向に行けるかな?


とにかく最高だった。最高過ぎる一冊だった。

困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)

困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)