FREE 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

経済の転換点というよりは、経済の変態。


「情報はFREEになりたがる」と説く本書は、デジタルのものは遅かれ早かれ無料になると断言しそれに伴なうビジネスの変化を鋭い視点で分析したとてつもない良書だ。情報はコピーができ、物質はできない。その結果情報は確実にフリーの方向へ突き進み、限り有る物質は稀少価値が生まれる。本書でのFREEとは無料という意味だけでなく自由と言う意味もある。

何からの自由?費用からの自由。


この本を読むと今の時代がいかに過去の経済からの転換点なのかがよくわかる。

FREEと過去の価値観の対比として、GoogleとMicrosoftの対立が挙げられる。よく知ってるように俺たちはGoogleが無料で使えることを知っているし、Microsoftの製品がいつまで経っても値段が高いことを知っている。Googleは無料であることによりユーザー数を増やして、ユーザーが得たいと思う情報を企業に売ることで利益を得ている。Microsoftは製品をそのまま売る。Googleで例えるなら「検索はあなたにとって価値があるでしょう?だから有料です」というようなもの。Googleは、我々消費者がWebサービスに1円たりともお金を払いたくないことをよーく知ってるわけだ。

FREEに向かっているのはWebやOSだけにとどまらずすべてのデジタル製品、さらにはありふれる「モノ」もフリーに向かっている。面白いのは音楽業界。以前からコピーに煮え湯を飲まされているこの業界はビジネスモデルが正しくない事を見事に指摘している。音楽は無料で配布して、ライブやグッズで儲けるべきだって。これは既にいくつかの箇所で成り立っている。それに引き換え日本のカスラックといったら利権を守ることしか興味がない。音楽業界の利益とカスラックの利益を完全に混同している。コピーをガチガチに固めることが音楽業界の利益か?カスラックの利益にはなるかも知れないが、音楽を広めたいならビジネスモデルを変えるべきだ。カスラックには利権による収入が大きすぎてその他の事を考える脳が麻痺してしまっている。要するに動機がないということだ。


コピーで煮え湯を飲まされるのは音楽業界だけではない。中国ではあらゆるものがコピーされている。それでも中国が破綻しないのは偶然ではなく、そこにしっかりとした市場があるからだ。コピーによって偽物が蔓延しても、偽物が広まることで本物の価値が高まるのだ。ブランド物の偽物が広がることで本物の稀少性がより高まるといったように。
中国のFREEの思惑はこれだけではなく、Microsoftはいつか彼らが裕福になったときに買ってもらえるようにと考えているからある程度寛大なのだ。


FREEを知ることで2010年代の経済が少なからず見通せるようになることは間違いない。この本を読む前と後では視界が明らかにクリアになっている。

最初はタダでモノやサービスを配布することに抵抗があるかもしれないが、フリーの流れはもう誰も止められない。
あと必要なものは勇気だけだ。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

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