プレゼンテーション Zen

創造性を誘発された。


あまりこういう本は好きじゃないし読まないのだけど、なんとなく読んでみたら面白かった。いかに今までのスライドが最低なものなのか、気づいてた気はするけど本書で確信した。ただの白背景に箇条書きでつらつらと書き綴り、スライドを音読するだけのプレゼン。

スライドはあくまで道具であり、道具に振り回されるべきではない。参加者にスライドを印刷したものを配布し、同じものをプロジェクタで映し、それを音読するだけのプレゼンターに対して本書はこう述べている。

あなたは何のためにそこにいるのか?

スライドや資料とは別にプレゼンターがいるのはもちろん理由がある。スライドだけでは説明できない箇所を人が説明することだ。スライドに何もかもを詰め込んでしまったらプレゼン自体必要なくなり、参加者たちは退屈なスライドを読む作業だけでよい。でも、退屈なのは面白くないでしょう?

本書によれば、良いスライドとは以下の三原則で表される。

  1. シンプル
  2. 明快
  3. 簡潔

この三つのルールを守ったスライドがどれだけ美しいか本書で知ることになる。良いマッサージを受けたことがないと他人に対して良いマッサージができないのと同様で、良いスライドを知らなかったからクソッタレなスライドが蔓延してしまったのだ。良いスライドがこれでもかと詰まった本書は眺めるだけで創造性が誘発される。あと一歩先に向かっていたら本書はアート集になっていた。


本書はプレゼンテーションの本というよりはプレゼンで用いられるスライドにフォーカスを当てた本である。その為プレゼンの構成や聴衆を眠らせないための話し方を知りたい人にとっては不向きである。しかしプレゼンの大きな構成要素であるスライドは、ほぼ全てが「最悪」レベルの品質でしかない。つまりのびしろが大きい。

良いプレゼンの要素は話し方や構成だけではない。プレゼンターとスライドの息がピタリと合うことも重要な要素なのだ。スライドにすべてを詰め込むのはやめよう。スライドは、シンプルに美しく。これは本書のタイトルにもある通り、禅だ。


本書自体一つの優れたプレゼンと言える。読みやすい文字の配置、グラフィカルで美しい画像に加え、紙の品質までもが本書を読むという行為をより心地よいものへと昇華させている。素晴らしい読後感。爽快感。本書の内容だけでなく本書自体が良い教材になっている。


そして最後に、この言葉が突き刺さる。

もう言い訳はできない。

プレゼンテーションzen

プレゼンテーションzen

  • 作者: Garr Reynolds,ガー・レイノルズ,熊谷小百合
  • 出版社/メーカー: ピアソン桐原
  • 発売日: 2009/09/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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