2つの自然数が互いに素となる確率について

無作為に選んだ2つの自然数 m, n が、互いに素である確率はいくらか。

m, n 少なくとも一方がある素数 p で割り切れない確率

いきなりすべての素数 p で割った結果を考えるのは無理があるので、問題を小さくしよう。
まず、m, n がある素数 p で割り切れない確率を考える。

整数 x が素数pで割り切れる確率は 1/p だ。m, n 両方共 p で割り切れる確率は (n が p で割り切れる確率 * m が p で割り切れる確率)である。

m, n どちらかが p を約数に持たない、つまり p が m, n の最大公約数で無い場合は上記の余事象を取れば良いので 1- (m が p で割り切れる確率 * n が p で割り切れる確率) となる。n が p で割り切れる確率は 1/p なので、答えは 1 - \frac{1}{p^2}

m, n 少なくとも一方がある素数 p で割り切れない確率は、1 - \frac{1}{p^2}

m, n が互いに素である確率

上記 「m, n のうち少なくとも一方がある素数pで割り切れない確率」をすべての素数について考えれば良い。
なので上記で得られた式
1 - \frac{1}{p^2}
をすべての素数に割り当てた積が「互いに素である確率」になる。

従って、m, n が互いに素となる確率は
{\displaystyle \prod_{p:prime}^{}{1-\frac{1}{p^2}}}
である。p はすべての素数。

ゼータ関数,オイラー

さて上記で出た式は、どこかで見覚えが無いだろうか。
ゼータ関数オイラー積(オイラー表示)に非常に近い。

\zeta(s) = {\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}{n^{-s}} = {\displaystyle \prod_{p:prime}^{}\frac{1}{{1-{p^{-s}}}}

特に \zeta(2) とはほぼ同じである。
\zeta(2) = {\displaystyle \prod_{p:prime}^{}\frac{1}{{1-\frac{1}{p^2}}}


では m, n が互いに素となる確率をゼータ関数を用いて表してみよう。こうなる。

\frac{1}{\zeta(2)} = {\displaystyle \prod_{p:prime}^{}{1-\frac{1}{p^2}}}

従って、m, n が互いに素である確率を求めるには \zeta(2) を求めれば良い。

バーゼル問題

\zeta(2) はいくらか。これはバーゼル問題として知られる有名な問題で、数学ガールでも取り上げられている。答えは \frac{\pi^2}{6}.

\zeta(2) = \frac{\pi^2}{6}

答え

m, n が互いに素である確率は下記の通り。
\frac{1}{\zeta(2)} = \frac{6}{\pi^2} \approx 0.60792

およそ 60.8%.

まとめ

久しぶりに頭の運動として数学を触ってみたが、一歩踏み込むだけでπとかゼータ関数とか出てきてびびった。
逆に言えば、簡単そうに見える問題でも一歩踏み込めば別世界に行くことができる。これはなかなか面白く、解けた時は快感である。

小学校の頃、近所の森の奥に入って、怖いもの知らずにどんどん突き進んで森を抜けて知っている道に出た時のような快感。

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

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