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書評:パターンランゲージ

書籍 デザインパターン

パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語 (リアリティ・プラス)

パターン・ランゲージ: 創造的な未来をつくるための言語 (リアリティ・プラス)

序章を読んで、本を閉じるところだった。いや、実際に閉じた。しかし閉じた後も本書のこと頭から離れず、すこし頭の中でこねくり回して気付いた。
代わりの利かない本だと。


パターンランゲージとは、日本語や英語やプログラミング言語のこと、ではない。小さなパターンの組み合わせで様々な表現を行うその様をランゲージとしている。
元は建築業界でのパターンの発見により生まれた。今ではそれが建築業界だけではなく別の分野にも適用できるのではないかということで、にわかに広がりを見せている。GoFデザインパターンも一種のパターンランゲージである。パターンを作ることにより、パターンの組み合わせを作ることができ、設計の助けになったり他社との意識共有のツールとして使うことができる。

デザインパターンは便利で良く知られているが、少しパターンの大きさが大きいように思える。デザインパターン同士での組み合わせはあまりなく、基本的には単品での扱いが主になるからだ。このようなパターンがもう少し細かくなったら、どれだけ便利になるのだろう。パターンランゲージが目指す所は単なる便利さだけでなくもっと壮大なところにあるのだが、それは後述するとして、ある手頃なサイズのパターンに名前がつくだけで、どれだけコミュニケーションコストが下がるだろう。非常に便利な世の中になるはずだ。

とはいえなにぶんまだあまり実績のない分野で、パターンというだけあって抽象度も高い。序章の一文を引用しよう。

「全体」の成長は、絶えざる「適応」(adapration)のプロセスでもある。その適応に於いては、その時々の「内なる力」を無視したり封じ込めたりすることなく、その力に正直・忠実でありながら変化していく必要がある。
(中略)
このとき、内なる力というのは、たった1つの力(単数形のforce)ではなく、いくつもの力(複数形のforces)からなるため、それらの対立・葛藤を解消(resolve)し、内なる力が解放されるように自らを変容させていかなければならない。

これではまるで哲学書ではないか。このような説明でパターンランゲージを理解するというのはなかなか無理があるというもの。まだ経験が蓄積されていないので、実績や経験で語ることができない以上、こうなってしまうのは仕方のないことなのだろうか。

正直言って本書は、宗教の匂いが漂う。まだ浸透しておらず、大きな実績もないままにパターンランゲージが熱心に紹介されるのはどうも信心が目立ってしまう。対談形式でパターンランゲージの素晴らしさを語り合うというのも、教祖様が信者向けに連発する書籍のようだ。とはいえ、それを差し引いても、「パターンランゲージを書くことは人類の知的なリソースの構築に貢献」と言い切る本書は代わりの利かない稀有な本である。

パターンランゲージはまだまだ発展途上である感は否めない。体系的でコンパクトなパターンランゲージ本がまだ存在せず、本書も概要の説明と、残りは対談という形式になっていることから伺える。浸透するまでまだしばらく時間がかかるだろう。しかしそれでも、この手法 --パターンに名前を付け、組み合わせる-- が今後重要性を増していくということは容易に想像できる。だから、これからの時代にとっては、必読書だ。ただし、パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)も併せて。


もう少し時代が進み、パターンが蓄積された時代を見るのが楽しみで仕方がない。
もう少し、後の時代に生まれたかった。それが悔やまれる。