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プログラマ10年目を迎える前に

気づいたらプログラマとしてお金を稼ぎ始めて9年が経ち、もうすぐ10年目という節目を迎えることになっていた。
そろそろ、振り返りをしてみようと思う。

中学生の頃に友人に借りたファイナルファンタジー7に熱中したあまり、「こんなゲームを作ってみたい」と思い始めてから 14 年くらい経つことになる。高校生になって「やさしいC」を買って挫折し、「やさしいJava」を買ったのが Java プログラマの始まりだった。


ろくに勉強らしい勉強をしたことは無かったのだけど、大学に入ってようやくプログラミングの勉強をして、特に他の世界を意識することもないまま Web の世界へ進んでいった。2〜3000行程度のプログラムを書いた時に、「突き抜けた」感覚があった。自分が進むべき道の輪郭が見え始めた。

大学三年の頃に先輩からの紹介でベンチャー起業でアルバイトをし始めた時をプログラマ歴の始まりと換算している。しばらくアルバイトをして仕事に慣れてきて、アルバイトという形態が煩わしくなってきた。在宅作業が増え、だんだんフリーランスへと進化していくことになる。今もどこかにあると思うが、当時 3 万円程度の仕事から 50 万円程度の仕事の依頼請負をするサイトがあり、そこで仕事を請け負って金銭を得ていた。それなりにお金は貰えたが、フリーランス業はプログラミング以外の作業に時間を取られることが多く、それが嫌であまりのめり込まなかった。

当時世間のことなど全くわかってなかった自分は、ソースコードが読み書きできるという今となってはちっぽけな才を心の拠り所にし、将来は絶対に起業して金持ちになってやるという野望を持っていた。これも良い機会なので恥ずかしい話も残しておくが、当時いわゆる万能感に満ちており、大金を稼げる予感がしていた。もちろん自分程度の能力ではそんな感覚が長続きするわけもなく、社会人になってすぐ万能感は劣等感に取って代わるのであるが、この時の万能感はなんとも心地よいものだった。人間をダメにする類のものだと思うから、あまりオススメはできないのだけど。

社会人になって理解できたことで一番大きいのは、世の中には知の巨人が散在しているということだ。自分が100人や1000人束になったところで全く敵わない、足元にも及ばない頭脳が数多存在することをようやく知った。自分はプログラミングの世界の表層をなぞっただけであるが、知の巨人達はこの世界を遠くまで見渡す眼を持っていて、知識知恵に裏打ちされた設計と実装を行っていた。一方、学生の頃には見ることがなかったおぞましいクソコードの山にも触れ、優秀な人は優秀なコードを書くと信じていた(いや、今も信じている)自分の世界の正しさが崩れ、数カ月ほど心を病み実家で療養することもあった。若かった。

知の巨人達は脚も早く、猛烈な速度で新たな知識を取り込んでいった。自分はその隣でのろのろとじれったい速度でしか進歩していなかった。でも、それでも進歩はしていたと思う。自分の知識が増えるにつれてプログラミングの世界は面白くなっていった。

一方、昔に比べて感動は減っていった。落ち着きが出てきた、とも言える。若い頃、アプレットにボールを表示して跳ねるプログラムを作れたときは感動した。MySQLしか知らなかった時代にmemcachedを知ったときも感動した。しかし今となっては、例えば Riak のようなキレのあるプロダクトが出てきても、「世の中が必要としているのならそりゃこういうプロダクトも出てくるよなぁ」程度にしか思えなくなってしまった。また、自分がバグを仕込んでしまった時や障害対応の際、以前は申し訳ないという気持ちでいっぱいになったり焦る気持ちに支配されたりしたものだが、今は冷静に対処できるようになった。申し訳ない気持ちは大切ではあるものの、所詮人間が書くのだからバグのないコードはありえないし、いくら申し訳ない気持ちになったところで障害は直らないのだ。

僕の生きてきた道での反省点は、"もっと勉強しておけば良かった"、これに尽きる。小学校の頃父親に後悔していることを聞いたら「もっと勉強しておけば良かった」と言っていた。もう少し真面目に聞いておけば良かったかな、とふと思う。

思うところはいろいろあれど、昔からずっと僕の中心にあるものは唯一つ。
プログラミングの世界は面白い。それだけは常に変わらない普遍の真実だ。

だから、プログラマになる選択したことは人生で最良の判断だった。

プログラミングの世界は知れば知るほど難しく、四苦八苦して少しばかり仕組みを知ると更なる深淵がこちらを覗いてくる。この深淵の深さがそのまま人類の叡智の積み重ねの高さかと思うと身震いせざるを得ない。これからも叡智が積み重なって世界は良い方向に進んでいくのだろうな。10年後くらいにはプログラミングは義務教育になって、その教育を受けた子達が大人になった時世界はどんな風に変わるのだろう。さらにその次の時代が来れば、今のスーパーコンピューターが掌に収まる日がやってきて、ノイマン型コンピュータは時代遅れになっていて、ビッグデータは酸素より当たり前のものになって、想像もつかない変化がやってくるはずだ。日本中の信号と渋滞のデータが解析されてスムーズな交通網が出来上がり、コンコルドよりも高速で気球よりも静かな飛行機が生まれ、様々な病気の特効薬が発見され、原子力を支配し、そしていずれは世の中から貧困が駆逐される日、それがやってくる。

大げさかもしれないが、プログラマとして生きる事はその時代の先陣を切っているような気がして誇り高いのだ。もう世界中で幾度と無く繰り返されてきたフレーズであるが、これからは IT の時代だ。未来を切り開くのはプログラマだ。

だから、最後に改めてもう一度。
プログラマになる選択をしたことは、人生で最良の判断だった。

次の10年目を迎えた時も、同じことを胸にしていたい。