いかにして問題をとくか
- 作者: G.ポリア,柿内賢信
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1975/04/01
- メディア: 単行本
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これは凄い!
現在のあらゆる問題解決法はこの本の糖衣構文に見えてくる。
本書はタイトルの通り、「いかにして問題をとくか」を追求した本である。未知の問題に対してどのように対処するか?問題を解くプロセスはどのようなものなのか?これらを体系化し、問題に対処できるようになるための指南書である。
本書が指す「問題」とは主に数学の問題であるが、数学だけに限らず広い範囲で利用できるものである。これは例題や練習問題が数学以外の問題も出ていることから伺える。
問題を解くプロセスは個々の分野ではあるものの、これほど広い範囲のものは見たことがない。今まで問題解決プロセスは記憶、ひらめき、感覚に頼っていたのではないか?
いかにして問題をとくか?これは以下のようにして表される。
- 問題を理解すること
- 未知のものは何か。与えられているものは何か。条件は何か。
- 条件を満足させうるか。条件は未知のものを定めるのに十分であるか。または不十分であるか。または剰余であるか。または矛盾しているか。
- 計画を立てること
- 似た問題を知っているか。その結果や方法を使うことはできないか。
- 未知のものをよく見よ!そうして未知のものが同じかまたはよく似ている、見慣れた問題を思い起こせ。
- 問題を言い換えることができるか。
- 計画を実行すること
- 解答の計画を実行するときに、各段階を検討せよ。その段階が正しいことをはっきりと認められるか。
- 振り返ってみること
- 結果を試すことができるか。議論を試すことができるか。
- 結果を違った仕方で導くことができるか。
- 他の問題にその結果や方法を応用することができるか。
本書では上記プロセスの各段階を細かに説明し、重要性を説いている。俺たちが遭遇する問題はこのプロセスを経ることで少なくとも「何がわからないか」を理解することができる。感覚的に問題を解くのとは大きな違いだ。また、問題を解くというありふれた行為について理解することで少なからず今後未知の問題に対する姿勢が変わるはずだ。その姿勢から今まで解けなかった問題が解けるようになるかもしれない。問題が解けるかもしれないという期待だけで問題を解こうという気力が湧いてくる。
面白いのは、本書内で問題を解くために必要なのはプロセスだけではなく問題を解こうとする好奇心が必要であると述べている点である。本書内では架空の教師と学生のやりとりで問題を解いていくのだが、学生に問題を解こうとする好奇心を教師は誘発しなくてはならないと述べている。同様に、教師は学生に「良い問題」を出す必要があり、どのようにして問題を創るかについて問題解決プロセスを用いて説明している。ただし、ほんのわずかしか触れられていないが。
それから問題について思った点が一つ。ひょっとしたら、数学的な問題よりも社会的な問題の方が難しいのではないか?決して数学は難問が無いとか簡単という意味ではなく、社会的な問題の方が「答えが無い」という状況に面することが多いから。数学って未定義も含めて何かしら答えは出るでしょう?
本書について残念な点がある。それは発行日が古いため印刷の質が非常に低いことだ。文字がかすれ、文章が傾いているのは読みやすさを損なう。これほどの本がこういった要因で読みにくくなっていることは残念だ。同様の問題で、フォントが読みにくいものであることとフォントの利用が一定でないことがある。太字で用いられるフォントがページによってバラツキがあるのだ。
ちなみに本書が最初に発行された日は昭和29年、西暦1954年。実に56年前。最新の11版が発行されたのは昭和50年。つい最近第35刷が刷られたばかりなのだが印刷の質は昭和50年で止まっているのだろうか?
これは今まで読んだ本の中でもかなりの名著だ。
なぜこれほどの名著が埋もれているんだ。おかしい。
文章を現代のものに修正して印刷の質を向上させれば、最高に賞賛される本だ。