まとめて書籍レビュー

1年くらい前から本を読むようになって、ある程度読む癖がついてから、どの本を読んだのか忘れるようになってきた。
細かな内容は忘れても、大体どんな内容かを思い出すために読書メモをつけるようになったのだけど、もっとたくさんの本を読むようになって気づいたことがある。

たくさん本はあれど、読書メモを書くべき本はそれほど多くない。


と言いつつメモっといた方が良い本もたくさん読んで、かつ読書メモサボってたので簡単に記録することにする。

夢を力に


すっかり本田宗一郎のファンになってしまった。職人。
純粋にエンジンに向けるその情熱は読んでいるこっちまで熱が伝わってくるほどだ。

未来のことばかりを考えていて思い出話をしたことがないというエピソードも載っているが、それだけ未来に期待している人が一体どれだけいるのだろうか。
無学歴であってもエンジンに対する情熱があれば、世界を獲れるのだ。

忘れていたのかそもそも存在していたのかわからない情熱を呼び起こされた後、本書のタイトルが胸に響く。
夢を力に。

エリートセックス

エリートセックス (幻冬舎新書)

エリートセックス (幻冬舎新書)


これまで加藤鷹のことを全身ティンコみたいな人だと思っていたが、そんなことは無かった。
テレビばかり見ていると馬鹿になるってのは本当だけど、セックスばかりしてると馬鹿になるってのは嘘なんじゃないか。嘘だった。

AVばっかり見て小手先のテクニックに頼ろうとするのではなく、精神的に満たすことができるセックスが良い、ということを説く良書だった。

知らないと恥をかく世界の大問題

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)


流行りの池上彰本。
核問題や宗教問題を解説しているのだが、巷で言われているようにわかりやすい。

一体どこからこの分かりやすさが来るのか?
おそらく、著者の物事を説明する際の順序の良さに起因している。
初めに少量の情報を出し、流れるように順序良く物事を説明しているから分かりやすいのではないかと思う。

ホーキング、宇宙のすべてを語る

ホーキング、宇宙のすべてを語る

ホーキング、宇宙のすべてを語る


ホーキング、宇宙を語るホーキング、未来を語るの間のホーキング博士の宇宙本。
内容は「未来を語る」とほぼ変わらないものの、「未来を語る」よりは本書の方が分かりやすいように思えた。
毎回相対論特集をやってるニュートンを買うくらいなら本書を一冊買うべきだ。


しかし最近のホーキング博士、以前より言葉にトゲがあるような気がする。
「われわれはその生命体を探しだしてはならず、できるだけ接触を避けなければならない」とか、「今後一世紀のうちに人類は宇宙へと移民しなければ滅亡する(かも)」とも言ってる。
以前だったら、「宇宙開発は人類の絶滅を防ぐための偉大なミッション」とでも言ってそうなものだけど。

星を継ぐ者

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)


最高に名作。
謎が出てくると、たまらなく嬉しくなる。謎が解ける喜びが味わえるから。


恐ろしいほどの知的興奮が何度も押し寄せるこの快感、そうそう味わえるものではない。
電車内で読んでいたがあまりの面白さに駅から自宅まで本が読めないことを惜しんで、ホームのベンチに座って読破した。
読書によって得た興奮の量で言えば、多分今まででトップ。エロ本は抜きにして。


本書を読んだら続編が読みたくなることは間違いない。
この作品に限っては「一部を読んで面白かったら続編を買う」なんてことはしなくていい。
面白さは保証するから。
二部:ガニメデの優しい巨人
三部:巨人たちの星

OS自作入門

30日でできる! OS自作入門

30日でできる! OS自作入門


OSを創ることはそれほど特別なことじゃない。
本書を読む前はOSを創るということは未知の領域、ブラックボックスのようなものだったが、本書を読んで変わった。
OSを創ることは、泥臭い作業だ。


昔のIBMIntelの人が決めたアドレス番地をシコシコと読んで、低級言語で実装する。
アドレス番地は半ば恣意的に決められたようなものなので美しさは少ない。
OSの中でも下回りが出来れば、ある程度のレイヤー以上では美しさが入る余地があるのだろうが、少なくとも本書のうちの前半は泥にまみれた匂いだ。

しかし不思議なことにこの泥まみれな作業はつまらないものではない。
OSという巨大な分野のうちの、ハードウェアとの境界に最も近い、言うなれば最先端部分をのぞき見できているのだから。

レガシーコード改善ガイド

レガシーコード改善ガイド (Object Oriented SELECTION)

レガシーコード改善ガイド (Object Oriented SELECTION)

  • 作者: マイケル・C・フェザーズ,ウルシステムズ株式会社,平澤章,越智典子,稲葉信之,田村友彦,小堀真義
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2009/07/14
  • メディア: 大型本
  • 購入: 45人 クリック: 671回
  • この商品を含むブログ (139件) を見る

「テストがないコードはレガシーコード」と定義付ける本書は、俺のようなレガシーコードに触れる技術者にとって必読の書。自分のプロジェクトが見透かされているのかと思えるほどレガシーコードに関する悩みを見事に解説する。

クソッタレなソースコードにあきれ果てながら仕事をしている人は多いのではないか。
そんな人への処方箋。

達人プログラマ

達人プログラマー―システム開発の職人から名匠への道

達人プログラマー―システム開発の職人から名匠への道

  • 作者: アンドリューハント,デビッドトーマス,Andrew Hunt,David Thomas,村上雅章
  • 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: 単行本
  • 購入: 42人 クリック: 1,084回
  • この商品を含むブログ (334件) を見る

普通のプログラマから達人プログラマへと昇華するにはどうすればよいか?普通のプログラマと達人プログラマは何が違うのか?


上記問いに一つ一つ明確な答えを導き、プログラマが知るべき、または実践すべき事柄が豊富に記載されている。本書に書いてあることはなるほどと思うものが多数あるものの、「当たり前」であるものも少なくない。
当たり前のことを当たり前にできてこそ達人プログラマへの道なのだ。

カッコウはコンピュータに卵を産む

カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉

カッコウはコンピュータに卵を産む〈上〉


ほんの僅かな足跡からハッカーを追跡し、あれよあれよという間に追跡の規模が広がり世界規模にまで達し、政治的やその他の困難を退けながらハッカーを追跡するドキュメンタリー。実際に起った話なので臨場感が良い。どこぞの物語のようにコンピューターの部分が曖昧にされているようなことはなく、詳細に、UNIXの文化の違いまで話題に出てくる。

日本のドラマや映画はサーバールームといったら青い光に包まれた部屋で、技術者は薄暗い部屋でやけにグラフィカルなGUIを操作しているようなステレオタイプが描かれることが多いが、そのような描写に辟易した技術者はぜひ本書を読むべきだ。

市場を創る

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)


これはいくらなんでも面白すぎた。世の中を見る目が変わった。
本書を読んだときの衝撃が忘れられず、未だに新しい本を読む前には「市場を創る」くらい面白かったらいいな、と思っている。
内容はタイトルの通り、いかにして市場を創るかという観点から、あらゆる形態の市場の分析を行う。


この本の良さはとてもここには書けないので、面白さはまた今度書く事にしよう。

新制度派経済学入門

新制度派経済学入門―制度・移行経済・経済開発

新制度派経済学入門―制度・移行経済・経済開発


上の「市場を創る」と併せて読みたい制度論的経済学。簡単に説明すると、世の中の経済には「制度」が大きく影響しているという論である。人間が自由意志を持っているとは言っても法律という制度に縛られていたり、文化や風習といった制度にも縛られている。


制度論がまだあまり一般的でないことが不思議でならない。

フラット化する世界

フラット化する世界(上)

フラット化する世界(上)


これも上記二冊と合わせて軽く読んでおきたい一冊。本書は経済のグローバル化によって世界中の経済がフラット化していく、としている。

制度論の本ではないのだが、本書を読むべき理由は、上記二冊は経済の「グローバル化が進んでもフラット化は起こらない」と記述されているからだ。発展途上国の経済レベルが1970年も2000年も変わらないのは、経済のグローバル化によるお金の流通は先進国の層のみで行われたからだとしている。


一方本書は逆の立場で、先進国は労働力が安い国へ外注し、それに伴い技術や資本の流出が起こり新興国が経済力をつけ、世界がフラット化していくという立場を取っている。
どちらも正しいように思えるこの問い、果たしてどちらが正しいのだろうか。

誰のためのデザイン?

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)


本書も大変なる良書。
読後には生活の中に溶けこむあらゆるデザインの善し悪しが気になってしまうほど、デザイン中毒になる。
そして今まで気付かなかったデザインの悪さに気づき、本書を読む前には感じ無かったストレスに苛まれることになる。


本書を読み終え、納得したら、同じ著者で本書の後に記されたエモーショナル・デザインを読もう。
デザインとは何か再度悩むことになる。

Joel on Software

Joel on Software

Joel on Software


技術者やプロジェクトのリーダーが読むべきエッセイ集。「あるある」の話から、どのようにしてプロジェクトを良い方向に持っていくか、というマネジメント系の話も多い。


全体的には革新的ソフトウェア企業の作り方によく似ている。内容にマネジメント系の話が多いことに加え、訳者が同じだからだ。
一介の技術者であっても、マネジメントを知ることで視野が広くなるはずだ。

そのために本書を。

スーパーコンピューターを20万円で創る

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)

スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)


自作PC界では有名(?)な牧野淳一郎氏が大学院生の頃の話。
あのGRAPEシリーズの一番最初のマシンの開発秘話。
分野によっては世界一も取ってるGRAPEはいかにして生まれたか?

最高の一品が生まれる過程を、一度は見ておくべきだ。