パニック障害からの快復

前回に引き続き、パニック障害ネタ。


パニック障害からの快復 こうすれば不安や恐怖は改善できる

パニック障害からの快復 こうすれば不安や恐怖は改善できる


本書にはずいぶん救われた。本書がなかったら、未だに社会復帰はできていなかったと思う。

言葉で説明しがたいあの強烈な不安は、決して摩訶不思議なものでもなんでもなくてちゃんとメカニズムがあって、既にほとんど解明されている。そのメカニズムを知ることができただけでも「治るのかも知れない」という自信が少しだけ湧いてきたし、後述する快復のための7つのステップが非常に良いものであった。

快復のための7つのステップは以下のとおりだ。

  • 食生活を見直す
  • リラクゼーションを学ぶ
  • 運動をする
  • 心の持ち方を変える
  • 想像力を働かせる
  • 社会の支えを生かす
  • 精神的価値を大切にする

それぞれのステップがなぜ効果があるのか説明がなされているし、なにより著者の「読者のパニック障害を治したい」という強い意志が伝わってくる。食生活はだいぶ改善できたし、リラクゼーションを学んで実行することでリラックスした状態や脱力感を学んだし、運動としてサイクリングと若干のウェイトトレーニングも始めた。この記事自体がそうであるようにパニック障害者の自分に対して心の持ち方はずいぶん変わった。想像力を働かせれば、それが身体に良い影響を及ぼすことがわかった。会社を休職してしまった自分を責める気持ちも「社会の支えを生かしてる」と考えて少しは楽になれた。以前より精神的なものを重視するようになった。
結果として、一ヶ月で非常に効果があった。パニック障害者だけでなく健康な人、または健康になりたい人が読んでも良いと思えるくらいのクオリティだと思う。


最後は25人に及ぶパニック障害者の快復までの体験記が記されている。あの不安を感じるのは自分だけではなかった。自分とはまた違った彼らの壮絶な体験記は「こんな人もいるのか」という点である種の好奇心も満たされた。
発症したときはパニック障害に関してほとんど知識も無かったし、ネットで調べるのも怖かった。当然パニック障害者の知り合いなんてのもおらず、この病気は世界で自分だけなんじゃないかという錯覚に陥った。孤独感に襲われた。でも快復した人がたくさんいることを知って、自分も彼らと同じように快復できる、とさらに自信を重ねることができた。

そして、もう一つ。この病気とはおそらく長い付き合いになるのだろうけど、その覚悟もできた。
少々過大な表現かも知れないが、(病気になったことと併せて)本書と出会えたことは人生を変える一つのターニングポイントだったと思う。

不安・恐怖症のこころ模様

不安・恐怖症のこころ模様 パニック障害患者の心性と人間像 (こころライブラリー)

不安・恐怖症のこころ模様 パニック障害患者の心性と人間像 (こころライブラリー)

もう一冊。
本書は上記と違って、パニック障害を治すための本ではない。パニック障害を患った患者の傾向や症状をまとめた本であり、言うなればパニック障害者の家族向けの本だと思う。正直なところ自分は本書を読んで不快になった。なぜなら、パニック障害者が感じる不安は本書に記述されている程度のものではなくもっともっと強烈なもので、心模様を伝えきれていないという点。もう一つ、それは著者がただの観測者でしかないという視点。著者が興味あるのはパニック障害者の統計であって、個々には興味が無い。そういう点で乱雑さを感じ、不快な気持ちになった。

ただ、それは仕方の無いことだしそうあるべきだとも思う。事実を事実のまま伝えることが社会の発展には必要だから。
だから、本書はパニック障害者が読むべき本としては若干層が違う。パニック障害者を家族や知人に持つ人がターゲットだと思う。